金属の樹脂化による13のメリットとは?

金属の樹脂化

2022.06.03

樹脂には、金属にない優れた特性が多々あります。さらに近年は、エンジニアリングプラスチックの開発が進んだことで、金属と同等レベルの機械的特性を持つ高機能プラスチックが登場し、従来は金属が使用されていた箇所の部品が樹脂に代替されることも多くなってきました。

 

ここでは、金属を樹脂化することで得られるメリットを13個に分けて解説いたします。

 

 

金属の樹脂化ニーズが高まっている理由とは?

現在は、日用品から生産財などの産業用品まで、幅広い分野で金属部品の樹脂化が進んでいます。実際に、当社に対するお問い合わせも、「今使っている金属の部品を樹脂化したいので、手伝ってほしい」というご相談が増えてきています。

 

金属の樹脂化ニーズが高まっている理由としては、大きく3つに分類されます。

 

  1. 機能性樹脂の開発
  2. 自動車部品の樹脂化
  3. 機器・装置の省エネ化

 

>>金属の樹脂化ニーズが高まっている理由とは?

 

特に直近は、機能性樹脂と呼ばれる特殊な樹脂の開発スピードが上がっており、これが金属の樹脂化ニーズが高まっている理由の1つとなっています。日常生活の中には様々なプラスチック製品がありますが、そのような一般樹脂とは異なる、特殊な機能を兼ね備えた樹脂を「エンジニアリングプラスチック」と呼びます。

 

国内外問わず様々なメーカーがエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックの開発を行うことで、強度や耐久性などの機械的特性、耐熱性などの熱的特性、絶縁性などの電気的特性において、優れた機能が付加された樹脂が次々と開発されています。その結果、従来は金属部品やダイキャスト品が使用されていた用途であっても、エンジニアリングプラスチックによって樹脂化することができるようになってきました。

 

今後も新しいプラスチック材料の開発は進んでいくと予想されているため、様々な分野で金属の樹脂化が進んでいくと見込まれています。

 

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金属を樹脂化することのメリット

金属部品を樹脂化することで、様々なメリットが生じます。ここでは、金属の樹脂化によるメリットを13個に分けて説明いたします。

 

軽量化

金属部品を樹脂に代替することで生じる最も大きなメリットは、軽量化と言えます。素材によっては、金属から樹脂に変更することで、重量が半分以下になる場合もあります。これは、鉄やステンレスなどの比重と比較すると圧倒的に軽くなるため、同じ体積で比較すると重量が軽くなるためです。アルミのような軽金属であっても、樹脂に代替することで6割ほどの軽量化につながる場合もあります。

 

省エネ

部品を軽量化することで生じるメリットになりますが、重い装置や機器を動かすためのエネルギーを、樹脂化して軽量化することで小さくすることができます。そのため、金属部品を樹脂化することが、省エネという効果を生み出すことにもつながります。自動車や産業機器など、比較的重量のある製品に対して効果を発揮します。

 

コストダウン

金属部品を樹脂化することで、軽量化と同等で重要視されるのが、コストダウンです。樹脂は切削だけでなく、金型を用いた射出成形による量産加工も可能となります。これにより、特に量産の場合は大きなコスト低減を見込むことができます。

 

また金属は、材料の価格変動が大きく、ステンレスやアルミ、銅といった金属部品はコスト高騰に見舞われることも少なくありません。一方で樹脂は、原材料の単価自体も安価で、価格変動に関しても金属と比較して安定しています。そのため、金属の樹脂化によって、安価で安定した材料調達を実現することができます。

 

塗装レス

チタンやアルミでは様々な着色も可能ですが、一般的な金属に着色をする場合は、塗装工程が必要になります。一方、樹脂には様々な特性を持たせることができ、着色に関しても自由度が高くなります。そのため、金属を樹脂化することで塗装工程の削減にもつながる場合があります。

 

また、金属では潤滑性を持たせるためには、別途コーティングが必要でしたが、樹脂ではフッ素等の物質を添加することで、樹脂材に潤滑性を持たせることができます。

 

このように、塗装やコーティングといった仕上げ段階での工程を、事前に材質に特性を組み込むことで工程削減することができるのも、金属部品を樹脂化することで発生するメリットと言えます。

 

耐薬品性

金属部品に耐薬品性を持たせるためには、やはりコーティングや塗装といった工程が必要になります。しかしフッ素等を含む高機能樹脂は、優れた耐薬品性を持ち、様々な用途で使用することができます。

 

防錆性

金属は一般的に酸化しやすく、錆が発生しやすい材質です。一方で樹脂は材質自体が防錆の特徴を持つため、防錆性を高めるのであれば、金属部品を樹脂に変更することで大きなメリットを得ることができます。

 

絶縁性

金属は金属結合により、基本的に導電性を持ちますが、用途によっては絶縁性が必要となる場合もあります。そのような場合は、絶縁塗装を別途行う必要があります。それに対して樹脂は、素材自体が絶縁性となるため、絶縁性が必要な箇所で使用される部品は、金属から樹脂化することが非常に効果的です。

 

耐水性

金属は水に濡れると、非常に酸化しやすくなってしまいます。一方で樹脂は、防錆と同時に耐水性も兼ね備えているため、特に耐水性が必要な箇所においても、金属部品を樹脂化することで課題が解決できる可能性があります。

 

透明化

金属は基本的に透過して反対側を見ることはできません。一方で樹脂は、アクリル樹脂などの一部の樹脂は透明で、反対側や中身を透かして見ることができます。中身や逆側を可視化したい場合は、金属から樹脂化することで実現することができます。

 

防音性

エンジンを一部樹脂に代替することで騒音が約5dB低減した、という検証もあります。金属部品を樹脂化することで、吸音材の役回りをして、騒音対策につながる可能性もあります。このように防音性という観点からも、金属部品を樹脂化することでメリットを得られる場合があります。

 

加工工程の短縮

金属部品を複雑形状に加工する際には、複数の工作機械を使ったり、段取りも多くなってしまいます。しかし樹脂化することで、特に射出成形の場合は一体成形することで加工工程を一気に短縮することができます。

 

高い形状自由度

特に射出成形加工においては、樹脂を溶かしながら金型に成形していくため、複雑な形状であっても高い形状自由度によって加工することができます。従来は2部品の金属部品の加工が必要だったところを、射出成形によって1部品に一体化することができれば、部品点数の削減にもつなげることができます。部品点数の削減は、リードタイムの短縮やコスト削減にもつながるので、樹脂の高い形状自由度は、金属にはない大きなメリットと言えます。

 

とくにデザイン性が求められる形状の製品の場合は、金属から樹脂に代替することで、求めていたデザインを実現する、という場合もあります。

 

大量生産

金属でも大量生産する方法は多々ございますが、樹脂の射出成形では多数個取りをすることもできるため、大量生産する際は樹脂に軍配が上がります。また、比較的サイズが大きい製品の場合であっても、金属を切削加工するよりも、射出成形で一気に加工してしまう方が、量産につながる場合もあります。

 

この他にも、現在は金属同等の優れた特性を持つ高機能プラスチックによって、下記のような特性で金属を上回る場合があります。

 

  • 高剛性
  • 摺動性
  • 高同軸性
  • 抗菌性
  • 耐結露性
  • 耐衝撃性
  • 耐熱性
  • 断熱性
  • 放熱性
  • 難燃性

 

 

金属部品を樹脂化する際の注意点とは?

このように、金属の樹脂化によって軽量化やコスト低減などの様々なメリットを受けられます。一方で、ただ金属部品を樹脂に代替することは難しく、また樹脂化に関してはもちろんデメリットもあります。

 

金属部品を樹脂化する際に気を付けなければいけないポイントは、大きく次の5つに分けることができます。

 

  1. 精度面で金属に劣ってしまう
  2. エンプラの場合はコスト増加になる可能性あり
  3. 加工方法によっては図面変更の可能性あり
  4. アンダーカット形状があると高価になる
  5. 金属とは異なる管理方法

 

>>金属部品を樹脂化する際の注意点とは?

 

 

金属部品の樹脂化事例をご紹介!

続いて、実際に当社が製作した金属の樹脂化事例をご紹介いたします。

 

 

こちらは、ABS樹脂製のつまみ(スイッチ)部品になります。

本製品は元々アルミでしたが、お客様から軽量化のご要望があったため樹脂化を提案いたしました。

>>事例の詳細はこちら

 

 

金属部品の樹脂化のことなら、サクラテックまで!

当サイトを運営する株式会社サクラテックは、従来はアルミを中心とした複雑形状部品の量産切削加工をメインに手掛けてまいりました。しかし現在の「金属の樹脂化」ニーズの高まりを受けて、なんとしてもお客様の想いに応えるべく、樹脂切削サービスにも取り組み始めています。

 

当社は、従来は金属を中心に加工をしていた「金属切削メーカー」です。そのため、金属の特性に近いエンジニアリングプラスチックなどの高機能性樹脂の切削加工に、長年培ってきた金属加工のノウハウを取り入れることで、他者と差別化された樹脂切削加工品をお届けすることができます。

 

またサクラテックは、マシニングセンタや5軸加工機といった工作機械を50台以上保有している、量産加工メーカーです。一般的に樹脂加工の場合は、切削加工や3Dプリンターにより試作が行われ、量産時は射出成形という手法が取られています。しかし場合によっては、射出成形で金型を起こすには費用対効果が合わないものの、ある程度のロット数が必要となるという、複雑形状の樹脂部品の製造が必要となる場合があります。当社ではそのような、「射出成形金型を作るにはコストが高すぎるが、複雑形状の量産部品のため製造対応しづらい」という樹脂製品の製造を快くお受けいたします。

 

さらにサクラテックでは、様々なお客様より金属の樹脂化に関するご相談をいただいております。当社は金属も樹脂も切削できるハイブリッドな切削加工メーカーとして、金属の樹脂化に関する様々な技術提案を行っております。既存の金属部品の図面のままに樹脂化をすることは困難な場合が多いため、お客様の部品用途や費用感、納期などを考慮した上で、最適な技術提案をいたします。

 

金属の樹脂化のことでお困りの方は、まずはサクラテックまでご相談ください!

樹脂/プラスチックの切削加工のことなら、
試作から量産まで柔軟に対応いたします。

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